悲哀の詩 作品No2
想い出
胸ぐらを掴んで振り回す、こっちは非力だがあらん限り力んで「コノヤロー」と言うと、「やるのか!」と肩の張った、厚い二の腕で突き飛ばされる。その体温と心臓の鼓動とこちらをかっと睨む目。 あらん限りの力で真っ向からぶつかってみたかった。 本音で話したこと、あるのかね、腹の底からお互い笑ったことなかったよな。 永遠、と刻んだ墓石ができつつある。もう、秋の気配だ。49日が終わったら、おやじ、あんたはどこへ行くんだ? あんたは静かにいなくなっちまったから、俺は時々困ってしまうよ。 深夜に、いや朝方かな。ひとりでずっと想うんだ。 あんたはどうしようもない奴だったけど、俺の心は空回りを始める。 だから悔しいんだよ。いつの日かあんたのこと忘れちまうんじゃないかとね。 だからだから、最近よく想うんだよ。俺が生まれたときからやり直さないかとね。 生んでくれてホントにありがとう。いまやっと胸に迫るものがさざ波のように寄せてくるのが、なんだか悲しくて。